波動シグナル研究所です。
「わかっているのに、損切りできない」
「買いたいと思った瞬間から、上がる情報ばかり探してしまう」
「そのうち戻るはず……と祈りながら、ポジションを持ち続けてしまう」
こうした「頭ではわかっているのに、そのとおりに動けない」
判断のクセは、認知バイアスと呼ばれています。
意志が弱いせいではありません。
誰の脳にも、生まれつき備わっているクセです。
認知バイアスとは何か
結論から言います。
認知バイアスとは、脳が省エネのために使う思考の近道が、トレードでは判断の歪みとして現れるもののことです。
脳は毎日、膨大な判断をこなすために「近道」を使います。
「高いものは良いものだ」「行列のできる店はおいしい」
——考え込まずに即断できるのは、この近道のおかげです。
ふだんの生活では便利なこの近道が、お金と損得のかかったトレードでは、判断を静かに歪めます。
たとえるなら、目の錯覚です。
同じ長さの2本の線が、矢羽の向きだけで違う長さに見える。
タネを知ったあとでも、違って見えること自体は消えません。
認知バイアスも同じです。
「知っているのに歪む」——ここが、この記事のいちばん大事な前提になります。
トレードを歪める6つのバイアス
トレードに現れる代表的なバイアスを、場面別に1枚のマップへまとめました。
エントリー前・保有中・決済後——それぞれの場面に、別のクセが待っています。
たとえば損失回避。
カーネマンとトベルスキーが1979年に発表したプロスペクト理論の中心にある考え方で、損失は同額の利益より約2倍強く感じるとされています。
損切りをためらわせる張本人です。
アンカリングは、買値という過去の数字がいつまでも判断の基準になり続けるクセです。相場は自分の買値を覚えていないのに、自分だけが覚えている——そんな状態を生み出します。
この2つは、それぞれ当研究所の個別記事で深掘りしています。
残りの3つは、まずマップで名前と場面を知っておくだけで十分です。
今日はこのあと、マップのいちばん左
——エントリー前から働き始める確証バイアスだけを、じっくり見ていきます。
確証バイアスが損切りを止める
「買いたいと思った瞬間から、上がる情報ばかり探してしまう」
——冒頭のこの声の正体が、確証バイアスです。
たとえるなら、欲しい車を決めた途端、街でその車ばかり目に入る現象です。
脳は、いったん結論を決めると、結論に合う証拠を自動で集め始めます。
探そうと思わなくても、勝手に集まってくるのです。
ポジションを持った瞬間、「この取引は正しい」
という結論が決まり、この自動収集が動き出します。
都合のいい情報だけが目に入る→確信が強まる→損切りが遅れる→含み損が広がって、ますます負けを認めにくくなる。
ループは一周まわるごとに強くなります。
「建値に戻ったら切ろう」
と思いながら切れないのも、「そのうち戻るはず」と祈るだけのお祈りトレードも、このループの中の景色です。
戻る根拠なら、確証バイアスがいくらでも見つけてきてくれます。
意志が弱いから切れないのではありません。
仕組み上そうなるのが自然です。
脳がふだんどおりに働いた結果として、損切りは遅れます。
こうした負けの心理全体の中での確証バイアスの位置づけは、FXで勝てない本当の理由(トレード心理学ガイド)で整理しています。
バイアスは知っても消えない
では、どう付き合えばいいのか。
目の錯覚を思い出してください。
錯覚が消えないなら、定規を当てて測るのが正解です。
見え方と戦わず、測り方を変える。
トレードの定規は、入る前に文章にしたシナリオと、あとから見返せる記録です。
判断をその場の脳に任せず、「ここまで来たら入る」「ここを割ったら切る」を先に書いておく。
そして、書いたとおりに動けたかを記録で確かめる。
判断の主役を、その場の脳から事前の文章へ交代させるのです。
意志の力で我慢しようとするほど、脳は「今回は例外」の理由を上手に見つけてきます。
がんばる場所は、我慢ではなく仕組みづくりのほうです。
バイアスそのものを消す方法は、残念ながら見つかっていません。
それでも、判断に挟まる「余地」を減らすことはできます。
定規を持ったトレーダーは、目の錯覚に振り回されにくくなります。
