波動シグナル研究所です。
「ATRという線をチャートの下に出してはみたものの、これで何を判断すればいいのか分かりません」
「ATRが上がってきたら買い、という理解で合っていますか?」
「損切り幅はATRで決めるといい、と聞いたのですが、そもそもその“ATR”が何を表す数字なのかが曖昧なままです」
ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)は、値動きの向きではなく、普段どれくらいの幅で動いているかを1つの数字で表す道具です。
名前は難しそうですが、見ているのは「揺れの大きさ」だけ。
ここでは計算の芯と、たった1つの実用的な使い道までを、順番に整理します。
ATRとは
結論から言います。
ATRとは、値動きの“普段の幅”(ボラティリティ)を平均して1つの数字にした指標です。
考案したのは、米国のテクニカルアナリスト、J・ウェルズ・ワイルダー(Welles Wilder, 1935-2021)。
1978年の著書『New Concepts in Technical Trading Systems』で、RSIなどと一緒に紹介されました。
イメージは、一日の気温の“振れ幅”です。
同じ平均20℃でも、朝は肌寒く昼は汗ばむ日と、一日じゅう20℃前後で穏やかな日とでは、持って出る服が変わりますよね。
ATRが見ているのも同じで、値段がいくらかではなく、一日でどれくらい揺れるのが普通かのほうです。
トゥルーレンジ(TR)は3つの幅の一番大きいもの
ATRを理解するには、まず1本分の「本当の値幅」=トゥルーレンジ(TR)から見ます。
TRは、次の3つの幅を計算して、その中で一番大きいものを採ります。
① 本日の高値 − 本日の安値
② 本日の高値 − 前日の終値
③ 前日の終値 − 本日の安値
(②③は、上下どちらへ離れたかではなく“離れた幅の大きさ”だけを見ます)
なぜ3つも比べるかというと、窓(ギャップ)を空けた動きを取りこぼさないためです。
前日の終値から大きく離れて始まった日は、①の「その日の高安」だけでは本当の動きを小さく見積もってしまいます。
前日終値をまたいだ分まで“本当の値幅”に含める——これが「トゥルー(本当の)レンジ」という名前の理由です。
ATRはトゥルーレンジを平均した1本の線
このTRを、一定の本数ぶん平均したものがATRです。
既定の期間は14。14本ぶんの「本当の値幅」をならして、いまはどれくらいの揺れが普通かを1本の線にします。
ここで、いちばん大切な性質を1つだけ。
ATRは、値段が上がっても下がっても、大きく動けば上がります。
方向はいっさい示しません。荒れているか穏やかか、その揺れの大きさだけを見る道具です。
ですから「ATRが上がったから買い」という使い方は成り立ちません。
上昇で荒れてもATRは上がり、下落で荒れてもATRは上がるからです。
使い道は損切り幅の点検
では何に使うのか。
もっとも実用的なのは、損切り幅が“普段の揺れ”より狭くなっていないかの点検です。
普段どおりの揺れの内側に損切りを置くと、たとえ狙いが当たっていても、いつもの上下(ノイズ)だけで先に狩られてしまいます。
ATRで「いま普段どれくらい揺れているか」を知っておけば、その揺れの外側に損切りを置くという発想が持てます。
ただし、ATRはあくまで損切り幅の“点検役”です。
直近の高値・安値やロットの逆算まで含めた具体的な決め方は、それだけで1本のテーマになるので、ここでは踏み込みません。
ATR=「狭すぎないかを測る物差し」という役割だけ、まず押さえてください。
設定と、数字を読むときの注意
期間は、まず既定の14のままで十分です。
短くすると直近の荒れに敏感になり、長くするとゆったり反応します。数字をいじる前に、まずは“揺れの大きさが変わっていく様子”を眺めるところから始めてください。
ATRのように「値動きの幅」を測る道具が、移動平均線や水平線といったほかの道具とどう噛み合うのか。
テクニカル分析全体のなかでの位置づけは、テクニカル分析の教科書で整理しています。
